振り袖、白無垢、黒留め袖や色留め袖、さらには五つ紋とか一つ紋。これらはご存知のとおりすべて日本の「和服」の呼び方です。たいして、ディナー・ジャケット、モーニング・コート、イヴニング・コート、カクテル・ドレスなどは「洋服」の名称です。
前者が色や形からきた名前であるのに対して、後者は、すべて時間を表す言葉のついた呼び名といえます。モーニングやイヴニングは誰でも知っている言葉、ディナーは夕食、カクテルは夜いただくもの。
明治の初頭、はじめてイヴニングという時間の名前のついた洋服が、日本に入って来た時、そのままイヴニング・コート、または夜会服とでもよんでおけばよかったのに、伝統的な日本の和服の呼び名がそうであるように、燕のの尻尾によく似たその色と形から燕尾服と名付けてしまったのです。少し大げさですが、この時から日本のフォーマル・ウェアの国際的着装法からの離反がはじまっていくのです。
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フォーマル・ウェア着装の大原則は、その名称が示すとおり『はじめに時間ありき』。洋服という物は受け入れたが、その着装法についてまでは十分に考えなかったのです。昼と夜によって衣服を着分けるという習慣のなかった当時の日本の人々にとっては、無理からぬことであったかもしれませんね。
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