佐世保市中心市街地視察報告書
H21.2.12〜13
TMOぬまづ
平成21年2月12日(木)、13日(金)の二日間に亘り、TMOぬまづ主催により「佐世保市中心市街地視察研修会」を実施、小栗委員長を団長に19名が参加した。
以下に視察内容の概略及び事務局として参加した感想を報告いたします。
はじめに
長崎県北部の主要都市「佐世保市」は、南は東シナ海につながる天然の良港、佐世保港に臨み、北には将冠岳、烏帽子岳などの急峻な山峰が聳え、自然の要害の地を形成している。
明治初期までは、人口約4,000人の半農半漁の一寒村でした。明治19年に旧海軍の鎮守府が設置されると急速に発展し、明治35年に村から一挙に市に昇格した。戦後は平和産業港湾都市として発展し、「造船」「炭鉱」を経て、現在は製造業とともに、県北地域の商業サービス業の中心となっている。
また、昭和30年に指定を受けた西海国立公園や平成4年オープンのハウステンボスなどのアメニティリゾートが整備され、毎年多くの観光客を魅了している。
【佐世保市のプロフィール】
○人口(H20.4.1住民基本台帳):255,974人/65歳以上人口:62,183人(24.3%)
○世帯数(H20.4.1):100,631世帯
○面積(H20.4.1):364.00平方キロメートル
○外国人登録人口(H20.4.1):1,418人
○経常収支比率(H18年度決算):86.3%
○市の主な産業:造船業(佐世保重工業)、観光業(ハウステンボス、西海国立公園)
○特産品:三川内焼、佐世保独楽、東浜一風干し、真珠、九十九島かき、させぼバーガー等
○文化施設:長崎県立大学、長崎国際大学、島瀬美術センター、アルカスSASEBO,セイルタワー(海上自衛隊佐世保資料館)、佐世保市亜熱帯動植物園、西海パールシーリゾート等
佐世保市中心市街地視察
初日は午後2時前に長崎空港に到着、陸路佐世保市内へ向かう。西九州道(高速道路)を経由し、佐世保みなとICで下車、宿泊地のセントラルホテル佐世保に3時頃到着する。ホテルでは今回商店街をご案内頂く佐世保市商店街連合会会長の竹本慶三氏の出迎えを受けた。
チェックイン後、竹本氏の案内で市中心部の4○3アーケードを中心に商店街の視察に向かう。佐世保の中心市街地を東西に走る「さるくシティ403アーケード」は約1km(960m)の長さがあり、直線距離の長さとしては日本一長いアーケードと言われている。アーケードの名前は、アーケード西側の「三ヶ町商店街」(松浦町・常盤町・栄町)と東側の「四ヶ町商店街」(島瀬町・本島町・上京町・下京町)をつなぎ中間点に地元の百貨店「玉屋」(○)があることに由来する。このアーケードに167商店が軒を並べている。
視察時は木曜日の平日であったが、沼津市内の通行量に比し、歩行者数が2倍程度に感じられるほど通行量は多く感じられた。
アーケードの道幅は仲見世商店街より広く、空間を広く感じることができる。通行量は三ヶ町より確実に四ヶ町の方が多い。佐世保商工会議所が実施した通行量調査によると、休日の通行量は三ヶ町商店街が9,195人(前年比0.3%減)、四ヶ町商店街が56,481人(前年比3.0%)。平日の通行量は、三ヶ町商店街が10,464人(前年比4.6%減)、四ヶ町商店街が49,426人(前年比5.8%増)であり、四ヶ町商店街においては昨年から通行量が増加に転じ、三ヶ町商店街においても下げ止まりの傾向を見せ始めている。
アーケードを歩いていると途中に公園が整備されており(松浦公園、島瀬公園)、これが快適な空間を提供し、良いアクセントとなっている。島瀬公園内に近代的な島瀬美術センターがあるが、年末にはこの建物の壁面いっぱいに壮麗なイルミネーションが飾られ、年末のアーケードの一大名物となっている。また、同時期に「きらきらミュージックフェア」「きらきらジャズフェスティバル」等も開かれ、市民の憩いの場として親しまれている。
アーケードを南北に横切り、市民の足である私鉄MR(松浦鉄道)が走っているが、アーケードを横切る部分が高架化されており、アーケードの天井部分を軌道が走っているため、歩行者に全く支障のない配慮がなされている。また、アーケードのすぐ脇に佐世保中央駅が設けられ、絶好の集客機能(交通機関)を提供している。
四ヶ町では2年前から一店逸品運動に取り組んでおり、参加店は現在42店舗に及ぶ。参加費500円で消費者に各店の逸品を順に見ていただく「逸品巡りツアー」も実施されており、商店街の付加価値向上に商店主が自ら知恵を出し合っている。どの店も店先が明るく、店員の応対も非常に親切・丁寧な印象を受けた。
アーケードの脇小路の所々に自動販売機が設置されているが、「Yosakoiさせぼ祭り」のロゴが入っており、商店街の役員の方に聞くと、自動販売機の販売代金の一部が「Yosakoiさせぼ祭り」の運営資金として寄付される仕組みになっているとのことで、この辺にも市民が中心になって街起こしに取り組む際立った工夫が見られた。
約1時間に亘ってアーケードを一通り視察したが、歩道にゴミが全く落ちていないのは驚かされる。従って、極めて清潔な印象を受ける。どのような方法で管理しているか聞きそびれてしまったが、歩行者の多さから窺われることは、市民一人一人が自分の街を綺麗に使うという自覚を持っているからと思われる。
Yosakoiさせぼ祭り
開催11回を数えたYosakoiさせぼ祭りは、例年10月の最終週の金・土・日の3日間に亘り開催され、昨年は全国から140チーム7,000人が踊り子として参加し、佐世保の秋を彩る一大イベントとなっている。開催期間中市内の14会場でよさこい演舞が繰り広げられるが、アーケードにおいても「アーケード会場」「島瀬公園会場」などを提供し、賑わいを演出している。
させぼのよさこい踊りは、27万人の観客動員があり、経済効果は21億円に上ると言われている。
戸尾市場街
市内の主要幹線道35号線沿いに防空壕跡を商店として利用した「戸尾市場街」があり、海産物や鮮魚などの商店が軒を並べている。平地が少ないため、古くから佐世保市民の台所として有効利用されているもので、元小学校の敷地の基礎部分に防空壕が掘られたものをそのまま利用している。
多彩なイベント
Yosakoiさせぼ祭り
開催11回を数えたYosakoiさせぼ祭りは、例年10月の最終週の金・土・日の3日間に亘り開催され、昨年は全国から140チーム7,000人が踊り子として参加し、佐世保の秋を彩る一大イベントとなっている。開催期間中市内の14会場でよさこい演舞が繰り広げられるが、アーケードにおいても「アーケード会場」「島瀬公園会場」などを提供し、賑わいを演出している。
させぼのよさこい踊りは、27万人の観客動員があり、経済効果は21億円に上ると言われている。
きらきらチャリティー大パーティー
パリの1万人が集まるパーティーを模して、403アーケードで年末に大チャリティーパーティーを実施している。参加料として1人1,000円(18人セットのグループ券、17人以下の場合は当日参加で1人2,000円)のパーティー参加券を販売、乾杯用のビールやワインとパーティーハットを提供している。アーケードに5,500人が集結する。
きらきらフェスティバル(11/20〜12/25)の100万個の電球購入費を、光のオーナーになろうと市民に呼び掛け、一口1,000円で募金を募っている。
総 括
佐世保鎮守府が置かれて以来人口流入によって大きくなった街であるため、地元の人が語るとおり、『みんな「よそ者」だから排他的な部分がない』という雰囲気があり、『来るものを拒まず』の精神で、まちづくり・にぎわいづくりに意欲のある人を活動に組み入れている点が、『日本一元気な商店街』と称される賑わいの原動力になっていると感じた。
佐世保においても車社会の進展や道路網整備による郊外の大規模住宅開発により、徐々に『まち』が拡散・拡大していき、次第に郊外・ロードサイドにも大型量販店・大型店が出店し始め、更に97年に中心市街地から7キロの位置に店舗面積3万uの郊外型大型SCがオープンしたことを契機に、地元商店街が『同じような状況で駄目になったまちを全国に数多く見てきており、そうなる前に手を打ちたい』と感じ、イベントを筆頭とした各種活性化策を講じ始め現在に至る。
イベント実施の哲学
イベントの起こし方は、『自助・共助・住民参加型の3つのキーワード』を指針に企画・運営されており、何より自身が楽しんでイベントを実施している。
竹本理事長をはじめ、商店街のコアメンバーに『考えていても始まらない・考えるよりまず行動』という精神が定着・浸透している。
事業が硬直化しないように「何より自由な発想」を尊重している。また、全てを補助金に頼るのではなく、経済的な自立のための工夫を常に考えている。⇒キーワードは、@採算が取れるのかAお客様に楽しんでいただけるかB集客は見込めるかC長続きできそうか、の視点。
豊富なアイディアの源泉は、『来るものは拒まず』。参加しやすいように朝7時から会議を実施。やがて商店街有志が夢を語り合う『若者・馬鹿者・よそ者会議』に発展、見事好循環に繋がっている。
まちづくりの専門家に、『日本一元気な商店街』と称されるまでの秘訣をキーマンである竹本会長と遠田氏に伺うと、両者とも『自分たちが楽しむことが大切。このまちで生まれ育ち、このまちで商いをしているのだから、一緒になって楽しもうと思っている』とのこと。なにより大きいのは、様々な意見を取り入れる『寛容の心』が賑わいの原動力と感じた。
佐世保商工会議所訪問
2日目に7名(後藤会頭、市川副会頭、小栗委員長、芦川会長、杉山局長、杉澤次長、事務局中野)で佐世保商工会議所を訪問、商業支援策を伺った。
佐世保商工会議所では、前田副会頭、田平専務理事を始め地域振興課の職員から話を伺った。
●佐世保は基地の町、基地関連の特需が900億〜1,000億円ある。基地関連の住民:海上自衛隊⇒10,000人、米海軍⇒5,000人
●行政と商工会議所(民間)が連携している。竹本さんは商業部会の部会長を務めている。以前に商業者が中心になって、イオンの郊外型大型店舗出店を阻止した。
佐世保市の「中活法」への取り組み状況
●平成10年度、佐世保市が「中心市街地活性化基本計画」を策定。その基本計画を受け、佐世保商工会議所は平成11年度に「佐世保市商業タウンマネージメント計画策定調査事業」を、平成14年度には「佐世保市TMOコンセンサス形成事業」を行い、具体的な中心市街地活性化の施策を検討。TMOの設置については、商店街毎の意識の差があり、熟度が高まらずTMO立上げまでには至らなかったとのこと。
●平成18年8月に「新中心市街地活性化法」が施行されたことを受け、佐世保市においては中心市街地がどうあるべきか、また、これまで以上の賑わいづくりやより住みやすい街づくりのためにどうするべきかを検討する「佐世保市中心市街地活性化調査・検討委員会」を設置。
●佐世保商工会議所では、新中活法に則り、商業面だけではなく、中心市街地の活性化に向け総合的な事業の検討が必要であると考え、「中心市街地活性化協議会」の設立の必要性や組織について検討し、平成19年年度に「佐世保市中心市街地活性化基本計画コンセンサス形成事業」を実施し、協議会設立に向けた具体的取り組み(協議会委員構成の検討/準備会の設立等)を平成20年度に進めているところである。
●佐世保市の悩みとして「三ヶ町再開発(中心市街地を構成する三ヶ町商店街の街区に、店舗・住居の複合ビル4棟の建設計画→マンション部分を買い取る見込みの業者が20年11月に撤退)」及び「ポートルネッサンス21計画(JR佐世保駅の海側にある市の造成地12ヘクタールに、商業施設や住宅を整備する計画→既存の商店街、コンパクトシティ化に反する計画)」の2つの再開発事業の進捗状況があるとのこと。
長崎市中心市街地(浜んまち6商店街)視察
●佐世保市内の研修終了後、長崎市に向かい、長崎浜んまち(アーケード商店街)を視察した。
中心市街地を取り巻く環境は、佐世保市と同様に地理的環境に恵まれている。特に路面電車・バスの停車場・停留所が、中心市街地の要所要所に点在、取り囲んでおり、平地が少ない長崎市においては「実生活とまちと移動手段」が機能している。これだけ交通網が相互に機能していると高齢化社会にかえって適している「まち」となっている。個人病院も大変に多い(49病院)。
●公共交通機関に恵まれていると言うものの、来街者の利便性を考えると、車社会の進展に伴い市内民間駐車場との連携は欠くことのできないインフラであり、携帯・インターネットによる中心市街地空き駐車場の検索システム(とーむde.com事業)を導入した。平成18年1月現在、加盟駐車場38箇所(駐車可能総数:3,213台)
●消費者の利便性と個店の経費削減、商店街の販促活動費捻出を目的として、連合体である「長崎市浜んまち商店街振興組合連合会」が受け皿になり、平成13年2月、デビット・クレジットカード一括処理事業(名称:長崎ぶらっと)を実施。中心商店街において、大手クレジットカードを始め地場信販会社を含む10社と商店街が包括契約を結ぶことにより、事業の参画加盟店は、ほぼ100%のクレジットカードへの対応が可能となった。また同時に、クレジットカードとデビッドカードに対応した多機能端末を導入した。→加盟店300店舗/クレジット取扱高約40億円(平成17年度)
●長崎の県庁所在地(人口45万人)でもあり、また、商店街組織としても全国で2番目に組織化された土地柄とあって、各お店・専門店の強さ(店構え・品揃い)が大変印象に残った。
●TMO構想の具現化として、中心市街地のゾーン毎に8つの地区活性化協議会を設置している点が特色。ゾーン分けの目的としては、@押し付けではなく『あるべき姿』を地元で考えてもらうことA事業を実施する場合、提案をした地域の人が実施主体となるという意識をもってもらうこと/行政・会議所依存体質を少しでも減らすことが目的。→ゾーン分けしたことにより、地区によっては温度差があり、活動できない地区もある。また、こうした合意形成は、地元住民ならではの利害関係/泥臭い話…の問題が起こりやすいのが両刃の剣とる。
長崎市においても、まちづくり三法の見直しにより、推進体制・役割分担等を仕切り直し、基本計画の見直しをしているところである。 以 上